KATO NK-5000

追悼 加藤製作所会長様

かつて、私がタダノに勤務しているとき、クレーン車のスペックで競うのが嫌だったのがコベルコでした。

営業で競うのが嫌だったのは、もちろん、加藤製作所だったわけです。

とにかく、ねちっこい。

寝技、寝技のオンパレードで、とにかく、契約してくれるまでここを動きませんから的な感じで顧客の玄関で駐留する濡れ落ち葉のような営業スタイルというか。それ、大丈夫なんですか、という訳の解らない約束を顧客と交わすなんて日常茶飯事。わざと雨の日に傘を差さないでズブ濡れになった状態で顧客の玄関に押し入り「濡れちゃったんで中に入っていいですか?」的な。ドブ板選挙を地で行くような昭和の政治家みたいな営業マンばかりでしたね、加藤さんは。憎めない感じでなく、本当に憎かったです。当時は。

でも、改めて、よく製品を見てみると、造りや動きはいいんですよね。タダノとは質感や設計の優先順位など基本的な考え方が違う点はありますけど、間違いなく世界がリスペクトする日本のクレーン車なんですよね。日本国内の営業マンが発するドス黒い霧のせいでそのへんが見えなくなってしまいますけど、加藤製作所は紛れのない日本を代表する建機メーカーなんです。

私が定期的に出張する東南アジア、中東全域で加藤製作所の油圧クレーン車を始めとする建設機械は今、この瞬間にも稼働し、その地域の生活基盤や文化の創造に貢献しています。その機械の精密で計算された構造や正確な動作、強い耐久性を通じ、世界の人たちがこんな機械を作っている日本という国の凄さや素晴らしさを認識し、尊敬してくれているのです。私が世界中どこに行っても日本人の建機バイヤーの端くれとして大事に扱われるのも、そんな世界がリスペクトする建設機械のお蔭なのです。

この度、日本製油圧クレーン車製造のトップメーカーである加藤製作所、加藤会長がお亡くなりになったという訃報に接しました。加藤会長は長きに渡り、加藤製作所の矢面に立ち、陣頭指揮を執ってこられた方です。世界の「KATO」を創り、発展させてきた最高の功労者です。

葬儀、告別式の時、私は予定されていた東南アジアに出張中で、残念ながら参列することができないでいました。
ただ、そんな私の目の前のアジアの建設現場で「KATO」のクレーン車がその日もいつもと同じように泥と油にまみれバリバリ稼働しているのです。

加藤会長、ありがとうございました。そして、本当にお疲れ様でした。
私たちクレーン関係者は加藤会長が残してくれた遺産を食いつぶすことなく、その偉大なるバトンを受け継ぎ、更に、「MADE IN JAPAN」を発展、成長させていく責任を新たに負った自覚を持たねばならないのです。

加藤会長のご冥福を心よりお祈り申し上げます。