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ラフタークレーン3次規制対応型批評

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2008 年の秋ともなると我々クレーン業界では国土交通省の排ガス 3 次規制に対応すべく、国内クレーン製造メーカーがモデルチェンジしたラフタークレーンが出揃っているわけです。気の早いお客様は仕様書を確認することなく 注文を入れたりして、メーカーが勘違いすると思いますけど大丈夫でしょうか?完全に「プロダクト・アウト」 OK になっていて、業界の発展、強化のためには良くない潮流だなとか憂いたりもしてしまいます。メーカーによっては「マーケット・イン」しないと市場に受け入 れられない機能、仕様になっているのに販促普及努力無しに「売れて」しまう状況…、良くないですねぇ。ひがみでしょうか?
3次規制対応型のテーマはいくつかあるわけです。

  1. 環境対策

    これは排ガス 3次対策のエンジン搭載なのでことごとく、また、当然のごとくクリアしているわけです。ただ、コベルコ 25t のエンジン日野、タダノ 16t エンジンカミンズに一抹の不安を感じますが、「ブン」って踏み込んでも排ガス全然出ないですね。良いことでしょうが燃費は悪くなるのかななどと心配してし まいます。

  2. 法令順守(コンプライアンス)

    これは特殊車両の通行許可というラフタークレーンのパンドラの箱を 「開けちゃった」テーマです。ご存知のようにラフタークレーンは車両制限令で定めた幅、重量などを超えて製造されています。道路法ではその制限(例えば総 重量は 20t 未満)を超えた車両は公道を走行できません。ただし、そのような車両を通行させたいと申請するものがいたら、道路管理者はその特殊性を審査し「必要上やむ をえない」場合に限って「必要な通行条件」を付して許可をすることができます。ラフタークレーンの 50t 吊は今も昔も「 D 条件」です。「 D 条件」とは公道を走行する際、「徐行」し「前後に誘導車」を配置し、かつ「 2車線内に他車両が通行しない状態で」、原則的に夜 21時~翌早朝 6時までの間に走らなければいけません。 35t もです。無理ですよね。やってないですよ、こんなの。でも、タダノはこれに挑みました。 25t 基本通行条件 A らしいです。でも実際の通行経路で申請した場合はすぐ「 C 」になるとか。表面上、というか、メーカーとして言い訳姿勢見え見えで、かえって不誠実な感じがするのは私だけでしょうか?その分、車体が微妙に軽くな り、吊り上げ能力は落ちるは、ブームはしなるはで、これってモデルチェンジして前の型より「良く」なってるのでしょうか?加藤製作所みたいに開き直って 25t は基本通行条件 C です、それが何か?的な姿勢もどうなんでしょうね?その点コベルコのパンサー X の「 B 」にはそれなりの意味があると思います。基本的な構造(上部にエンジンを搭載)を変えてきてますからね。タダノも本当はスラントブーム( GR-300N 的な)で「 B 」条件クリア的な車両を市場に投入したかったのではないかと思います。間に合わなかったのか、意見が割れてまとまらなかったのか、景気が低迷してきたので 無難な方向(現行モデルの基本踏襲)へ逃げたのか。でもタダノが売れるんだろうな。ブランド力ですね。あっ、あと 60t ( 70t )の 4軸車クレーンは売れないですね。残念ながら無理です。まず「法令ありき」でクレーンを製造すると、今までのことが全否定になりますよ。「法令」の方を現 実に合わせるように修正すべきなんです。この問題をこの方向で煮詰めていくと必ず行き詰まりラフタークレーンの自己矛盾を起こしてオールテレーンに逃げる しかなくなりますよ。

  3. ライフサイクルの長期化

    この点ではやはりコベルコのパンサー X がチャレンジしましたね。なにせトルコン、ミッションというラフターの高額修理候補の2大部分が最初から付いてないのですから。あと、部品一点、一点も耐 久性を増してして長く使用すると良さが判るのではないかと思います。フルモデルチェンジなのでやはり品質が落ち着くには3年くらいかかるでしょうが狙いは 良いと思います。コベルコの弱点である電気の配線も改善されていて良いのではないでしょうか。

  4. IT機能搭載

    加藤製作所のクレーンには付いていません。通行条件といい独自路線 というか、ある意味立派です。日本建設機械工業会の平成18年度の答申を全く無視するその姿勢はすがすがしささえ感じてしまいます。だって IT 必要ないでしょ?メーカー混合ユーザーならどうするんですか?あと現状保有している車両はどうなるんですか? 5台未満保有ユーザーはどうなるんですか?いらないって。広域レンタルのショベル複数保有の会社とかなら良いと思いますよ。あくまで土木系建設機械に対す るニーズなのでは? 特にトラブルシューティングではラフターの遠隔時確認はほとんどできないと思いますよ。これをやるにはラフター整備の基本的な概念を根底から変えた車両を 市場に投入しなくては。つまり、修理のほとんどを部品のアッセンブリー交換で済ませるような構造を持った車両を投入すべきです。ラフターをマニュアルにな い壊れ方をするんですよ。

  5. 解除不可能なコンピューター搭載

    これはタダノの車両がなっています。どうなんでしょうか?事故防止 の観点からは長い目でみれば建設現場から評価されるでしょうね。やはり 50t クラスの事故はほとんどがコンピューター解除によるもので重大災害に繋がるものだからです。特に 25t クラスでは前のモデルとの能力差がある状態でさらにコンピューター解除ができないのでユーザーから不満は必ず出るでしょうが説得していくべきでしょうね。 ただ、16t と12tにこの機能は必要だったのかなと思います。 16t 、12tにこの機能を付けると道具としての使用にかなり制限がかかるので疑問を感じますが…。

以上述べてきましたが、いや、ほんと4次規制はどうなるんでしょうか?

私が望むモデルチェンジは「現場で稼げる」機能を搭載したもので しょうね。道具として使用する側面と資産として運用する面の2つを同時に満たし、かつ、市場に新しい価値を提供できるようなクレーンの登場を願ってやみま せん。日本のクレーンメーカーは偉大です。その高度な技術と経験の蓄積で世界と競争し勝ち抜いていける力を持っていると思います。メーカーの「挑戦する姿 勢」こそ我々クレーン市場関係者は評価すべきだと感じています。

Published in対話そして探求